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共通テストの国語(1) 速く読む方法①:問題文はぜんぶ読むのか?

2023年2月5日 勉強方法

今回から、共通テスト国語のオハナシである。

医学部受験生に国語の苦手を訴える人が多いということは、すでに述べた。医学部受験生だけでなく、理系受験生には国語への苦手意識が広く見られる。

国立大志望者が多い分野でもあるから、共通テストの国語が鬼門になってしまうようだ。

自分が国語が苦手だということは、同じ分野に志す他の受験生もだいたい国語が苦手だということであり、実は国語では大きな差がつかない…と言える場合もある。が、国立医学部志望者の場合、ライバルたちは共通テストで軒並み高得点をマークしてくるから、共通テストの国語の失点が死活問題になる、という言い方もできる。

長年、国語の指導をしていると、そもそも「時間内に問題文を読み終わらない」受験生がかなり多いことに気づく。これは英語にも言えることであるが、大学入試は内容の理解度だけではなく、だいたいの場合、受験生の問題の処理速度も見ている。運動会のパン食い競走なみに急いでやらないと、とても終わらない分量の問題が出されることが多いのだ。それは恐らく、どの科目でも同じだろう。

普通の処理能力の持ち主では終わらない分量だと分かっていれば、最後まで終わらなくてもよい、と初めから割り切れるし、実際に難関大の数学の二次試験などでは、全何問中何問完答できれば合格…などという伝統的な目安も語られる。

が、国語や英語に関しては、合格者はほとんど時間内に終わっているのではないかと思われる。「問題文を読み終わらない」では、残念ながらそもそも予選落ちになる公算が高い。

たまに、共通テスト(旧センター)間際になって「国語の問題文を、とてもではないが読み終わらない」と泣いて訴えてくる受験生がいる。ある程度の読書経験を積んでいる人ならば、共通テストの問題文は時間内に読み終わる。そう作られているのだから、読みきれないと言って泣いている受験生は、残念ながら「今さら遅い」とも言える。今までの十数年で、読書の訓練をしてこなかったのが悪いのである。自己責任論。

そもそも、国立大に入ろうという学生が、今までの人生でろくに本を読んだことがないというのが、おかしいと言えば無論おかしい。そんなことでは、入学後にレポート1本書けないのではないか…と危ぶまれて当然だ。学部によっては、レポート、山ほど書くんですよ。単位を取るために。

大学入試は本来は、大学で学ぶのにふさわしくない「無教養な」受験生を排除するよう制度設計されているのだから、読み終わらないと言って嘆く受験生には、今までの十数年をやり直せ、ということなのかもしれない。

(現在のように大学教育が大衆化すると、大学全体で見れば、ご存じのように学生の多様性は非常に大きくなっている。もはや以前のように、大学生に必ずしも基礎「教養」を要求できない世の中だ。)

だから、焦った理系受験生を中心に、

「共通テストの国語は、出題された文章をぜんぶ読む必要はなく、まず個々の問題に目を通し、文章の中で問題に該当する傍線部分の前後だけを読めば正答できる。頭から全文を読むなどとは愚の骨頂である。」

というような意見が、毎年、都市伝説のように流布するらしい。

現にわたくしQ氏も、たまにこういうやり方でいいかどうかの質問を受ける。しかも共通テストが迫った今ごろの時期に。

…んなわきゃないでしょ。

受験生、あまりに追い詰められて乱心したか。

問題文を読んで問いに答えよ、というのが大前提なのだから、ぜんぶ読むに決まってるじゃないの。

そして、出題者の心理を想像してほしい。出題された文章を読むのが遅くて、全部読まないまま、傍線部の前後だけナナメ読みして問いに答えようとするような受験生が多いことは、作問者はとうぜん分かっている。

だからこそ、配点の高い問題を、傍線部の前後だけ読んでも答えが見つからないような形で作るのである。

傍線部からかなり飛んだ箇所の文を踏まえないと正解にたどり着かないような問題を作るのは朝メシ前だし、実際に、国語の問題というのはそう作られている。

問題と、それに対応する傍線部の前後だけ読んで正解しようなどという試みは、それこそ愚の骨頂であり、無駄なあがきというものである。

「…普通、そんなこと分かってるものなんじゃないの?」と思ってしまうのは、Q氏の現実認識がアマイらしい。受験生の中には、平気で「読まない戦略」を採用し、しかも大学にはちゃんと合格したい、という、典型的な「苦労せずに成果だけ得たい」人がいる。しかも、かなりの割合で。

う~ん…そういう生き方をすると、あとでいろいろ無理が出てきて、けっきょく物事がうまく行かなくなるだけの話なのだが…近年の受験生の中には、どうもこの辺の話がマッタク通じない人の割合が増えてきている。

そんな人ばかり増えて、この国、どうなるのやら。がんばれオワコン。

…とばかりも言っていられない。問題文を読むべきか、読まざるべきか。詳細次回。