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共通テストの国語(3) 速く読む方法③:「アリさん読み」よさらば

2023年2月16日 勉強方法

さて、共通テストの直前になって「国語の文章が読み終わらない」と泣かれても、わたくしQ氏を含めた講師としては、正直、今さら知ったことかよ…という怒りと失望が少し湧いてくる。表には出さないが「今まで十数年、なにしてきたの?」という脱力感にとらわれるのだ。

が、邪教「ヨマヌ真理教」を奉じて開き直り、いばりくさっているような受験生はともかく、謙虚に頑張っている受験生が「時間内に読み終わらない…」とひそかに悩み、泣きそうになっているのなら、ひと肌脱がざるを得ない。Q氏なりの漢(おとこ)気のつもり。

まず、読むスピードが遅いから読み終わらないのだ、ということは、どのケースでもほぼ間違いないだろうから、確認してほしい。

問題は、なぜ遅いのかである。

(もちろん、すでに速く読めるから、そんな話は別に聞かなくてもよい…という諸君は、以下の部分は適宜読み飛ばしてほしい。)

Q氏の見るところ、読むのが遅い原因のかなりの部分に「頭の中での1文字ずつの音読」があるのではないかと思う。大量の文章を読みなれていない受験生は、唇を実際に動かすことはないにしても、出題された文章を、アリが這うように「バーチャル音読」しているのではないだろうか。

実験してみると分かるが、これをやっていると、普段は読むのが速い人でも、共通テストの問題は時間内にすべて終わらない。自分が「脳内音読」している自覚がある受験生は、まずその習慣をやめ、文章を順序よく目でとらえていく、純粋な「黙読」を意識してみてほしい。

今まで十数年、なにをやってきたんだ…などとキツいことを言うが、実際には他人の頭の中を覗けない以上、他人がどう「読んで」いるのかは、誰にも窺い知れない。だからこそ、みな自分の読み方が「普通だ」と思ってしまうのだ。

「脳内音読」は別に異常な読み方ではなく、文字を追いながら確実に意味を読み取る方法としては、ちゃんと意義がある。江戸時代までは、誰もが文章をいちいち声に出して読んでいたのである。

が、令和の大学受験では、残念ながらそれでは間に合わない。読解のスピードを上げるには「黙読」が絶対に必要なのだ。

現代社会では大量の「文書」がやり取りされているが、気が遠くなるような分量の文書を片っ端から読んでいくには、やはり「印刷された言葉を音声に切り替えず、『絵柄』のまま言語として認識する」訓練が必要なのである。

…え…ムリ…と思った諸君。安心してほしい。

黙読への切り替えは、Q氏の指導経験からすると1~2か月あれば可能だ。本人が「脳内音読」を自覚しておらず、或いは自覚があっても、それが普通だと思い込んでいることが、読むスピードがなかなか上がらない原因のひとつであり、その「自覚」さえ生まれれば改善できる。

読解に際して、生まれつきの脳内の処理スピードという要因は確かに存在するだろうが、読むさいの習慣の影響の方が間違いなく大きい。

現にQ氏が過去の受験生で「実験」したところ、脳内での音読をやめて黙読に切り替えたにもかかわらず、試験本番になっても国語や英語の問題文を時間内に読み終わらなかった受験生は、ほぼゼロであった(正確に言うと、現役時は歴代でひとりかふたり、いたような気がする。が、いずれも浪人して合格している)。

実際に、国語や英語の問題処理速度を計測してみると、共通テスト本番を体験していない現役生の場合、規定時間より10~25分オーバーくらいの人がいちばん多い。30分以上超過する人はあまりいない。

欲をいえば見直し時間が欲しいが、純粋に問題を終わらせるためだけに十数分を短縮すればいいのなら、それはじゅうぶん可能だ。現在、まだまだ時間内に読み終わらずに困惑している受験生は、まず脳内で音読するのをやめてみよう。

(音読をやめて黙読に切り替えろ、というのは国語の場合である。英語は外国語だから、音読が大事だ、と必ず言われると思う。英語の出題文をどう読むかについては、また機を改めて。)

リアルタイムで読んでくださっている受験生で、国語の問題文を読むスピードで苦しんでいる諸君。今日から、過去問や模試に取り組む際には、まず「黙読」を意識してみよう。共通テストまでの期間で、ある程度は速く読めるようになるはずだ。

そして、黙読できるようになったら、さらに黙読のスピードを上げる。その方法論については次回に譲ろう。