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共通テストの国語(4) 速く読む方法④:漢字は大事

2023年2月25日 勉強方法

さて、共通テスト国語の問題文を脳内でいちいち音読せず、黙読に切り替えたとしよう。

そうなると、読むスピードはだんだん上がっていくはずなのである。が、それでも黙読になかなか慣れず、読んでいる内容が頭に入らない、という人もいると思う。

黙読を意識し始めた時、ひとは問題文を目で追う際に、次のようなやり方をしているのではないかと、わたくしQ氏は思う。

サンプル文章は坂口安吾「風と光と二十の私とより。

田舎の中学を追いだされて、東京の不良少年の集る中学へ入学して、そこでも私が欠席の筆頭であったが、やっぱり映画を見に行くなどということは稀で、学校の裏の墓地や雑司(ぞうし)ヶ谷(や)の墓地の奥の囚人墓地という木立にかこまれた一段歩(たんぶ)ほどの草原でねころんでいた。

  ※( )内はルビ。

これを黙読の初期は、

「田→舎→の→中→学→を→追→い→だ→さ→れ→て、…」

と、1文字ずつ追って読んでいるのではないだろうか。

が、それだとまだスピードが上がらない。脳内音読と大して変わらないスピードにしかならないはずである。

このように1文字ずつ追っている自覚がある受験生諸君に、さらに自分で確かめてほしいことがある。それは、1文字ずつ追って読むために、文章をかなり目に近づけているのではないか、ということだ。

文章に目が近すぎると、いわば「下を向いて前輪を見ながら自転車を運転している」ように不安定な状態となり、視野が狭すぎて文章を目で追いにくくもなるし、文章全体の意味もとらえにくくなる。

そこで最初に、問題冊子から少し目を離そう。それで読みにくくなるようなら、近視や遠視など、視力の問題があるかもしれない。眼鏡の度数や乱視の入り具合、斜視なども影響する。人によっては、もっと深刻な目の障害が隠れているかもしれない。試験には間に合わないかもしれないが、眼科を受診しよう。

少し目を離したら、まず「自立語に視線を置き(以下、視線を置く場所を「アイポイント」と呼ぶ)、視線を動かす際には付属語を飛び越え、いきなり次の自立語に行く」という練習をしてみよう。

自立語・付属語ってなんだっけ…という諸君、その区別が根本的に分かっていなくても大丈夫。

要は、意味が分かる言葉の区切り(文節。中学でやったでしょ)の最初にあるのが自立語(名詞、動詞、形容詞、形容動詞など)で、自立語のあとにくっついているのが付属語(助詞、助動詞)である。

つまり次のように読む。

田舎中学追いだされて、東京不良少年集る中学入学して、そこでも欠席筆頭あったが、やっぱり映画行くなどということ稀で、…」

この赤い太字部分が自立語だが、この中で最初に「田舎」にアイポイントを置き、「の」はついでに視野の端でとらえる感じにする。

次に「の」を飛び越して「中学」に飛んでしまう。やはり「を」は目の端でついでにとらえる程度にし、文字を、いちいち蟻が這うようにたどらないようにする。

「追いだされて」は厳密に「追いださ+れて」にしなくとも、まず「追い」にアイポイントを置いて一度にとらえ、次に「だされ」に飛び、「て」を目の端でとらえるような形でいいだろう。

自立語の見分けは厳密にできなくともよい。ごらんの通り、自立語には漢字が使われていることが多いから(名詞や、用言〈動詞・形容詞・形容動詞〉の「語幹」は漢字表記するものが多い)、要は「漢字が使われている語を飛び石のようにして、ぴょん、ぴょんとアイポイントを移動させながら読む」のだ。日本語が漢字かな交じり文になっているのは、この読み方に便利だからだろうとQ氏は考えている。

蟻が這うように読む読み方を卒業し、バッタというか、ワニの背中をぴょんぴょんと跳んで渡った因幡の白ウサギ(令和の若者は知らないかも。日本神話ね)みたいに「跳ぶ」のである。跳躍力が必要だ。

目に妙に力を入れた状態で、行の上を直線的に動かしながら1文字ずつたどっていくのではなく、漢字で書かれた部分の上に、「カクッ、カクッ」という感じで、内心、数字をカウントするようにしながら、リズミカルに視線を動かしていく。視線を動かすときだけ眼の筋肉を使い、文字を見るときにはあまり凝視しないようにする。1文字を凝視すると、視線をリズミカルに動かせなくなるのだ。

この読み方ができるようになれば「文節読み」という読み方がほぼできている。そうなれば、もう、読むスピードはどんどん速くなっていくはずだ。

黙読の仕方については次週につづく。