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共通テストの国語(5) 速く読む方法⑤:「文節読み」をマスター

2023年3月3日 勉強方法

さて、「国語の出題文を読み終わらない」と嘆いている諸君は、漢字で書かれた語を飛び石のようにして、その上をぴょん、ぴょんと跳びながら視線を動かす黙読の方法を、練習してみただろうか。

もちろん「そんなの、もうとっくに習慣になっている」とうそぶく受験生もいるだろうが、そういう人は、もとより時間内に読めないという悩みとは無縁だろう。いまは「時間内に読めない」と泣きべそをかいている受験生向けの記事だから、ちょっと我慢して付き合ってほしい。

さて、漢字で書かれた語は「自立語」という分類に入るものが多いと述べたが、その自立語が、文中の意味の最小単位である「文節」の中心であり、文節の最初にある。

文節は「ネ、サ、ヨ」などと入れて区切ることができる単位だ、と中学で習うよね。なに、忘れた? いや、別に忘れていても大丈夫。

要は、日本語を使う人が自然に文を区切りながら発音する場合、その区切りが文節で、その文節の最初にはだいたい漢字表記された語がある。そして慣れると、文節はだいたい、書かれた文章中の部分の視覚的な長さで分かる。

だから、漢字語を飛び石のようにしてとらえる練習ができれば、文を文節に分解しながら、文節ごとに視線を動かしているのとだいたい同じになる。

この、視線をリズミカルに動かしながら、文を文節ごとにパッ、パッととらえながら読んでいく黙読の仕方を、仮に「文節読み」と呼ぼう。

漢字語を飛び石のようにアイポイントとする読み方が何となくできたら、今度は文節をより意識した読み方を練習してみる。

サンプルは引き続き坂口安吾「風と光と二十の私と」より。

Sというそのころ有名なボクサーが同級生で、学校を休んで拳闘のグラブをもってやってきて、この草原で拳闘の練習をしたこともあるが、私は当時から胃が弱くて、胃をやられると一ぺんにノビてしまうので、拳闘はやらなかった。この草原の木の陰は湿地で蛇が多いのでボクサーは蛇をつかまえて売るのだと云って持ち帰ったが、あるとき彼の家へ遊びに行ったら、机のヒキダシへ蛇を飼っていた。

この文章を文節に分解すると、下のようになる。文節と文節の間に「/」を入れる。

Sと/いう/その/ころ/有名な/ボクサーが/同級生で、/学校を/休んで/拳闘の/グラブを/もって/やってきて、/この/草原で/拳闘の/練習を/した/ことも/あるが、/私は/当時から/胃が/弱くて、/胃を/やられると/一ぺんに/ノビて/しまうので、/拳闘は/やらなかった。/この/草原の/木の/陰は/湿地で/蛇が/多いので/ボクサーは/蛇を/つかまえて/売るのだと/云って/持ち帰ったが、/ある/とき/彼の/家へ/遊びに/行ったら、/机の/ヒキダシへ/蛇を/飼って/いた。

文節の切り方については、中学校の国文法の知識を厳密に思い出せなくてもよい。このように文を文節に分解してみると、その区切り部分はだいたい直感的に分かるもので、なおかつ、分解したひとつの文節がだいたい似たような長さになることに注目しよう。

「文節読み」では、前回のように「漢字語=自立語」の上にアイポイントを置かない。今度は、自立語や付属語という単語の区切りに関係なく、「文節の(機械的に考えて)真ん中あたり」にアイポイントを置き、文節の端から端までを、カメラで撮るように一度で目の中にとらえる。

たとえば、「学校を」「飼って」という文節なら、視線を動かして「校」「っ」あたりにアイポイントを置く。絶対に、頭の中で「がっ・こう・を」「かっ・て」音読せず、「学校を」「飼って」という「絵柄」全体を視野に収める。

つまり、下の●のあたりにアイポイントを置いて、文節全体をそのつど一度で、かたまりとして把握するのである。

S●と/い●う/そ●の/こ●ろ/有●名な/ボク●サーが/同級●生で、/学●校を/休●んで/拳●闘の/グラ●ブを/も●って/やって●きて、/こ●の/草●原で/拳●闘の/練●習を/し●た/こ●とも/あ●るが、

3文字でできた文節は、仕方なく1文字目と2文字目の間に●を置いたが、2文字目にアイポイントを置くと、ちょうど文節の真ん中である。

そして、上の「●」をサッ、サッと順々にたどるようにして、視線を移動させていく。文節の間を、筆でなでるように視線を動かすのがコツである。

もともと1文字ずつ脳内音読していた受験生諸君は、これだけで相当速く黙読できるようになるはず。読書慣れしている人は、すでにこういう読み方はしていると思うのだが、読むスピードが上がらず悩んでいる諸君は、まず、この読み方を試してみよう。

読むスピードアップ対策について、まだまだ次回に続く。