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共通テストの国語(6) 速く読む方法⑥:カタマリを大きくする

2023年3月6日 勉強方法

前回までに見てきた「文節読み」は、黙読しながら読むスピードを上げていくテクニックとしては初歩的なものである。読書に慣れた人は当たり前のようにやっていると思うので、釈迦に説法だろう。が、共通テストの国語・英語の出題文を読み終わらない受験生は、たぶん、こういうところからできていないはず。だから処理速度が上がらないのである。

こういう「速く読む技術」を体系化して、「速読術」として公開したり、速読の訓練プログラムやアプリを提供したりしている団体や個人も多々ある。

ひと昔前、本のページをパラパラめくるだけでもう1冊読んでしまった…というような「驚異の速読術」が流行った。わたくしQ氏もその真似をしてみようと四苦八苦して練習してみたが、読むのがかなり速くはなったものの、いまだに頁をパラパラめくっただけで1冊読み終わる…の域には達していない。

が、現実には「そこまでの速読」をする必要性も小さいように思えるので、Q氏は「ほどほどに速く読めるようになった」段階で、速読の訓練はやめた。

が、眼筋を的確に動かす、一度に読める範囲を広げる等、現代の「速読術」はその後も発展し、今では、それなりに洗練された科学的方法によっているらしい。興味と時間があれば、速読に関する本を読んだり、アプリを使ったりして訓練してみる価値もあるかもしれない。大量の文書を次から次へと読む必要は、医師を目指す諸君には、将来必ず生じるはずだ。

「速読」は文章を味読する愉しみと効用をぶち壊し、文章をただの「情報」としてしかとらえられない、表面的な知識ばかりの薄っぺらい人間を量産する悪しき慣行だ、と主張する人々もいる。小説家に多い意見だ。Q氏も実は、どちらかというとその意見に賛成なのだが、今は「いかに国語の出題文を時間内に読み終えるか」がテーマだから、あえて試験向けの速読術に話題を絞る。速読そのものの是非は、また機を改めて。)

さて、文節をカメラのように一度で視野にとらえられるようになったら、その文節の上を移動しながら読んでいくスピードも、だんだん上がってくるのではないかと思う。

面白いことに、このように文節の上をサッ、サッと移動する読み方を始めると、ジェットコースターのように、どんどん視線の移動が加速していくのである。時々「誰か止めて…」という速さまで行くことがあるかもしれない。その体験もしてみてほしい。

共通テストの国語の本文を時間内に読み終えるには、この「文節読み」程度の速さで十分である。もちろん、縦書きの文章では視線をタテに動かさなければならないが、視線の動かし方が身につけば、タテ書き・ヨコ書きはあまり気にならなくなるのではないか。

文節読みができるようになったら、例えば、旧センター試験の過去問でもよいから、第1問(現代文・評論)を読んで、時間をストップウォッチで計ってみてほしい。共通テスト国語は大問1問を20分以内にやればいいのだから、文節読みを使うだけで、だいたい目標をクリアできるだろう。

そして、もっと速く文章を読みたい場合は、視線を動かして視野に一度に収める単位を、文節より大きくしていく。たとえば2文節程度を一度に視野に収めるとか、3文節くらいをパッと目に入れるようにするとか。

一度に視野にとらえる単位を大きくする場合も、その単位のだいたい真ん中あたりにアイポイントを置き、一度に読む単位をカメラのようにしてパッ、パッととらえ、リズミカルに視線を動かしていく要領は同じだ。

そして、そんな風にリズミカルに視線を動かしていると、上に述べたように、どんどん目が速く動くようになっていく。そして、視線を動かすたびに一度にとらえられる単位が、かなり大きくなっていくのを体験できるはずだ。

そうなると、もう視線をパッ、パッと行をなでるように動かしていくのではなく、行を直線的になぞりながら、途中、1行につき2、3回「写真に撮る」ように字面を網膜に焼きつけ、視線の動きは止めずに行から行へと進んでいく…という読み方になっていくのではないかと思う。行から行へと、文章を「サーチ」していくような読み方だ。

この「サーチ」するような読み方をさらに速めていくと、もはや文章の1行ずつに視線を走らせるのもまだるっこしくなり、2行ぐらいずつ斜めにたどりながら視野に入れていく、いわゆる「ナナメ読み」になっていく。

そのくらい速く読めるようになれば、共通テストの出題文は時間内にじゅうぶんに読み終わる。このような練習をある程度積んで、なおかつ時間内に終わらない人というのは、いるのかどうか知らないが、「Q氏的には」ちょっと考えにくい。やはり「読み」の訓練は訓練として、問題を解く練習とは別にやらないと、試験を余裕をもって終わらせるための処理速度が身につかないだろう。読むのが遅いのは、決して、単に脳の処理速度が遅いためではないのではないかとQ氏は思う。

さて、そのように読む速度を上げると、今度は受験生の皆さんから悲鳴が上がってくる。それは「あまり速く読みすぎると、文章の内容がぜんぜん頭に入らない!」という、新たな苦情である。

はて…一難去ってまた一難か。どうする受験生。ここで次回につづく。