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共通テストの国語(7) 速く読む方法⑦:メリハリをつけて読む

2023年3月14日 勉強方法

どうだろう受験生諸君。共通テスト国語の文章を読むのは、少しは速くなっただろうか。

問題文を脳内でいちいち音読せず、黙読に切り替えると、読むスピードはだんだん上がっていくはずだ。が、スピードは上がったものの、今度は読んでいる内容が頭に入らない…と悲鳴を挙げる人が出てくる。

また、そこまで視線を動かすスピードを上げてはいないのに、黙読に切り替えると、どうも文章の理解度が落ちる…という人もいるのではないかと思う。

わたくしQ氏が、問題文を読む速度を上げるための黙読術を指南に及ぶと、必ず「目の速度にアタマの理解がついていかない」と、ぶうたら不平不満を並べる受験生が出てくる。なるほど、ごもっともな苦情ではあるが、けっきょく、諸君は文章を速く読めるようになりたいのか、なりたくないのか。どっちなのだろうか。

「もちろん速く読みたい。でも、急いで読んでまったく理解できないのならば、文章を速く読む意味がない」──そうぼやく受験生諸君、皆さんは、ごくごく簡単なことを見落としてはいないだろうか。

目で追う速度を上げすぎた結果、文章が理解できなくなったのならば、理解を優先させて、文をゆっくり読むようにすればいいだけの話ではないか。非常に単純な話である。

…え? それでは元の木阿弥だって? ゆっくり読んだら時間内に終わらない?

チミたちはよほどの石頭か。モアイ像か。はたまたミケランジェロ作、ダビデ像か。

要は「ゆっくり読むところと速く読むところを作る」ようにすればいいだけの話ではないだろうか。

当たり前といえば、当たり前の話だ。一度速く読み始めたら、なにも二度と止まってはいけない…というわけではないのである。

分かりにくい箇所に差しかかったら、止まったり、ゆっくり読んだりすればいいだけの話である。

そう。速く読みながらちゃんと文章を理解するための最大のコツは、「読む速さにメリハリをつける」ことに尽きるのである。

速読、速読と言うが、実は「ひとは、自分の教養のレベルを超える文章を速くは読めない」ものらしい。ナナメ読みの猛スピードで読み飛ばすことができるのは、理解しやすいスタイルで書かれた文章であって、難解な書籍などは、もともと、そんなに速く読み飛ばすことはできないのである。

一歩一歩、着実に理解しながら読まないといけない文章は、やはり、それほど速くは読めない。

次の文章を読んでみてほしい。

吾々は日常生活においてすでに、世界のすべての事物・存在及び動作を支配する一種の秩序の如きものとして、又それに属することによって吾々の認識が万人に共通なる尺度と法則とを得るものとして、時を表象し理解する。しかしながらかくの如きは決して時の根源的の姿ではない。それは、われわれ自らその中にあって生きる所のものを、われわれの前に置き外(そと)の世界に投射して客体化したものであって、すでに反省の作用によって著しく変貌を遂げた派生的形象である。時の根源的の姿を見ようとする者は、一応かかる表象を全く途に置き棄てて根源的体験の世界に進み入らねばならぬ。

   波多野精一「時と永遠」より 原文旧字旧仮名 ( )内はルビ

あるいは、

元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。

   民法 第398条の10  第2項

…何言ってんだ…という感じですよね。寝ぼけたこと言ってるんじゃないよ…という。

こういう文章は、速読の名人でもさほど速くは読めないのである。ひととおり目は通したとしても、意味は分からないだろう。これらは、一字一句をたどりながら「解読」していかないと理解できない文章なのだ。

受験生諸君が悩まされている共通テストの評論なども、何やら小むずかしいことを言っていて、分からないと感じられるものが交じっているかもしれない。もし、内容が難しくて理解しにくい文章が出るのなら、せっかく速読の練習をしても、読み飛ばして処理するのにはおのずから限界があり、けっきょく時間内に読みきれないのではないか。

…と思うでしょう。

が、実際に読んでみると分かるが、一文一文、すべてが難しくて理解できないという文章は、めったにないのである。少なくとも、そういう文章は大学入試では出題されない。

入試に出される国語の文章は、どれも「難しい文と、さほど難しくない文が交じっている」ものである。

だからこそ「速く読んでも意味が分かるところはスピーディに読み進み、分かりにくい文に突き当たったら、そこだけゆっくり読んで理解に努める」というような、緩急をおさえた読み方をすればいいのだ。

ここでまた紙数が尽きた。次回につづく。