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共通テストの国語(22)  現代文の新傾向

2023年10月28日 勉強方法

(2022年12月31日執筆)いやー、あっという間に大晦日ですね。寒い日が続き、大雪の影響も心配な年末である。医学部受験生の諸君、年明けにはいよいよ本番ですが、今夜は年越しそばでも食べ、紅白でもつけながらリビングで勉強してください。

「年末年始ぐらい勉強は休みにしよう」もアリなのだが、年末年始で皆が休んでいるからこそ勉強する、というのもアリである。結局どちらにするのか、こういうところにも、いちいち「決断」「賭け」が入り込んでくる。人生ずっとそうですよ。

さて、12月は国立志望者向けではあるが、共通テスト国語、特に第1問・現代文(評論)を題材にいろいろお話をさせていただいた。文章の読み方、選択肢の検討の仕方など。これらの方法は第2問(小説)以降にも使えるし、速く読む方法は英語にも、理科をはじめとする他教科の問題文を読む際にも応用できると思う。与えられた問題文を、緩急をつけて自在に読みこなせるようにしてください。

さて、今年最後のエントリーでは、旧センター試験から共通テストへの移行にともない、国語の問題がどう変化したかを確認しておこう。

世間では、特に数学や英語の出題傾向の変化を踏まえてか、「共通テストはセンター試験とまったく違う」「時間内に解けない」という悲鳴が上がっているようだ。確かに、2022年度(令和4年度)の数学ⅠAなどは思い切った出題で、各分野からの問題を羅列しただけのセンター試験とはまったく違う、出題者の意気込み(?)を感じさせる応用的な問題であった。英語もリスニングの比重が格段に増したため、文法と読解中心だった従来の作問に、あからさまな転換がもたらされたことになる。

が、これら傾向の変化は予告されてもいたし、「知識重視から思考重視へ」「双方向の学びの探究」を目指して実施された教育課程の度重なる変更の中で、すでに織り込み済みだったのではないだろうか。…今さら騒ぐか? というのが、悪いけれどわたくしQ氏の感想である。

だって、もともと数国を記述式にし、英語は外部テストで代替するくらいの改革をやる予定だったんですからね。その改革は骨抜きにされてしまったけれども、新しい共通テストの出題は、各科目ともより発展応用を指向し、学習内容への多面的なアプローチを要求するという意味では、まあ、別に想定内の変更なんじゃないの? という気がする。むしろQ氏には、当初の改革案が挫折した問題の方が大きく感じられる。

国語の現代文に関しては、第1問の評論も第2問の小説も、末尾に読者の「ノート」というまとめが付け加えられ、そこで本文を少し離れた「批評」的視点からの解読を試みさせるという新機軸が打ち出されている。ノート部分も含め、大問1題につき複数の文章を読ませ、比較検討させるなどの工夫もなされている。

このような変化に関しては、複数の文章を出題することで1つの文章が短くなりやすく、試験会場で文章をじっくり味わいながら読む楽しみがやや薄れたな…という感想を持つが、味読したい第2問の小説は1本の文章をじっくり読む形式が引き続き守られているし、「Q氏的には」ま、いいかというところである。

評論文を複数の出題とすることで、テーマに立体感が出るため、対話型学習という趣旨にも合っているし、これはこれでけっこう面白いと思っている。別に、あまり悪い変化ではないのではないだろうか。

「いや~…受験生じゃないからって、余裕ぶっこくなよQ氏ィ。複数の文章を読まされる受験生は大変なんだからな~」という声が聞こえそうだが、出題される文章が劇的に長くなったわけでもない。「時間内に解けない」とか悲鳴を挙げている受験生は、当ブログのQ氏の今までのエントリーでも読んで、速読の練習をしてくれたまえ。甘いこと言っていてはダメなのである。と急にスパルタおやじになるQ氏であった。

現代文の末尾の「ノート」などは、文章全体を俯瞰的に眺め直さなければならないから、確かに「頭の中でまとめられない」受験生にとっては大変だろう。だから…ということだろうが、選択肢は多くの場合1つ減って、4択になっている。受験生の労力への配慮はあるのだ。「ノート」部分の解法も、まず2択に絞れる場合は絞って、選択肢の各部分を本文と矛盾するかしないか、慎重に検討する…というやり方は同じだから、要するに全部同じやり方でやればいいのである。犬の卒倒、ワンパターン。

「共通テストはセンター試験とまったく違う。時間内に解けない」という「街の声」に、悪いけどQ氏はぜんぜん同情しない。

そもそも、試験というのは受験者の一定の知識や技能を試すために行うのだから、測りたい能力が同じであっても、問題形式は出題者が自由に変えることができる。英語の語彙力を試したければ、ストレートに単語テストをしてもよいし、難しい単語がちりばめられた長文を読ませ、その理解度を確かめてもよい。

それに、例えば入学試験の合否は、受験者の相対的な順位で決まる。問題が異様に難しければ平均点は下がるだろうが、受験者の順位は、問題を簡単にした時とは大きく変わらないことも多い。

だから、受験者は「出題形式」を過剰に気にすることなく、英語で必要なのはこの能力と、これと、これ。数学ⅠAはこれとこれ…という風に見極めた上で、各分野の基礎力をまんべんなくつけることに注力すべきなのだ。試験当日、昨年とはちょっとくらい出題傾向が変わっても「あ、おいでなすったね…」と呟きながら、平然と問題を解き始める。きつい受験勉強を通じて、それくらいの図太さが育ってなければ困るのだ。自分に対する過保護はダメである。

問題傾向が大きく変わると総崩れになるという受験生は、つまるところ実力不足なのである。実力不足のまま当日を迎える辛さはあるだろうが、仕方ないではないか。それが現在の等身大の自分なのだから。

共通テストのように受験人数が多い試験ならば、学習目標を明確にするため、長期にわたってある程度出題形式を安定させる必要はあるだろうが、それだって絶対ではない。出題形式は、常に昨年とは変わりうるものと割り切って、落ち着いて受けるしかない。そして、自分が動揺するような問題では、周囲の受験生全員が動揺しているはずだ、と想像力を働かせて、会場での緊張をコントロールすることに努めるしかない。

まあ、共通テストに関しては、毎年大幅に変えるということはないし、センターとの違いに戸惑っている受験生が多いなら、その戸惑いは全員が共有しているもののはず。国語については、Q氏が今までお伝えしてきた読み方と選択肢の絞り方を、参考になりそうなら参考にしてもらって、いざ会場へ!

皆さん、どうかよいお年をお迎えください。