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共通テストの国語(11) 大問ごとの傾向

2023年4月4日 勉強方法

前回まで、おもに共通テスト国語の第1問(現代文・評論)について、合理的な「解き方」の前提となる、問題文の読み方などを提案してきた。

けっきょく、わたくしQ氏の「おススメの解法」は、ごくごくオーソドックスなやり方にとどまっているとも言える。医学部受験生諸君の中でも、国語が得意な人にとっては「何を今さら」かもしれない。

が、いつも国語で泣いている諸君のみならず、共通テスト受験者が国語で満点を取ろうとすると、やはりなかなか難しい。敵もさるものである。

どの科目でもそうであるらしいが、共通テストの作問者は、時としてなりふり構わず「満点阻止」を仕掛けてくる。

そしてセンター試験時代から、大学入試センターの作問技術はかなり洗練されており、たまに例外的に不出来の年もあるとはいえ、択一式という形式の限界の中では、つねに最善を尽くしてきたと評価できると思う(だからと言って、Q氏は択一式という形式そのものを支持しているわけではない)。

老練な出題者がそのつど、あの手この手でさまざまな罠を仕掛けてくるのだから、受験生がそうそう太刀打ちできるわけもない。国語の場合、日本語で日本語の解釈を問うという他教科と異なる性格ゆえに、満点阻止のためにはかなり強引な引っかけを施さざるを得ないこともあるのだが、時にはわれわれ講師も思わず唸らされるような、うまい設問がある。あ、これを出されたら受験生はひとたまりもないだろうな…という。

そして、どの科目もそうだろうが、講師がうなるような良問が出題されると、平均点が一気に下がる。

が、これもどの科目もだいたい同じだと思うが、ちゃんとやれば8割は取れる。そして、ものすごく得意な人は、9割を超えることもできる。しかし、9割を超えるとかなり空気が薄くなり、満点はなかなか取れないように工夫してある。

その科目が不得意な人、勉強不足の人は4割から5割程度で終わり、平均点がだいたい6割前後になる。

旧センター試験はだいたいそのような水準を保っており、形式の制約の中ではかなり出来のよいテストだった。共通テストはまだ蓄積が少ないが、試験の性格上、結局、センター試験と同じような線を狙って問題を補正していく可能性はある。

国立医学部受験生諸君は、共通テスト最低8割台が至上命題であろうから、国語には神経を使うのではないかと思う。センター時代も含めた過去のデータを見ると分かるが、共通テストの国語の場合、平均点は6割に及ばない年がかなりあり、どの年度でも平均点は英語より10点前後低いと考えてよい(センター時代は英語筆記のみ、共通テストになってからは英語筆記+リスニングの合計点との比較)。

英語より常に平均点が低い原因は、国語の1問の配点の高さによる。問題数との関係上、重要な設問の配点は7点ないしは8点だから、1問間違えると、洪水にえぐり取られる堤防のように、8点がゴソッと消えていくのである。

その上、前回までも話題にしてきたように、分量が多くて読みきれない、という受験生がいる。どの科目もそうだろうが、国語の共通テストも、事前に解答方針を立てて臨むに越したことはない。

受験生諸君から質問が多いのは、共通テストの大問4問を、どの順序で解いていったらいいのかということだ。制限時間は大問1問20分とし、1問を20分前後で解ききることはだいたいできるが、たまに時間オーバーしてしまう…というくらいの受験生をモデルに考えよう。

まず、高得点が狙える分野は第1問の評論と、第4問の漢文である。評論と漢文の読解は比較的デジタルに・論理的にできるので、「文学的センス」もあまり要らない。評論と漢文できっちり得点する、というのは、共通テスト国語のセオリーだと考えてよいのではないかと思う。

平易な言葉で書かれていて簡単なように思われる第2問の小説には、意外に難問というか、悪問スレスレの難問、あるいは単なる悪問が交じる。何しろ文学的センスや「行間を読む能力」「感情移入の能力」が多少は要求される分野だし、本来はある程度自由であるはずの文学作品の「解釈」を強引にひとつに絞ろうというのだから、もともと択一式に最もなじまない分野なのだ。センター試験時代に「あってはならない大愚問」のようなものが見られたのは、決まって第2問の小説であった。

第3問の古文は、そもそも解読が最も難しく、時間がかかる。すべての文が受験生の教養レベルを超えているので、速読するのは絶望的だ。途中で時間切れになる原因の最たるものがこの古文だから、古文で泥沼にはまると、得点しやすい漢文が手つかずに終わるという、最悪の展開になる。とはいえ、古文は簡単な年は非常に簡単。古文が簡単な年に、漢文がかなり難しいことはまれにあるが、どちらかというと、難易度は古文≧漢文の年が多い。

以上から、共通テスト国語の解答方針としては、「まず現代文、特に評論をガッチリ取り、古文を不確定要素と見越して、漢文だけはちゃんと解き終わるように時間配分し、解答順序を考える」ということになるのではないか。

このへんで、詳しくはまた次回に述べよう。