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共通テストの国語(12) どの順序で解答するか?

2023年4月11日 勉強方法

共通テスト国語のお話も大詰めである。

医学部受験生の国語に対するニーズはさまざまだろうが、幸か不幸かわたくしQ氏が国語講師であるため、この際だから、国語について受験生によく聞かれることがらをもう少し取り上げてみよう。

「共通テストの国語はどの順序で解くのが結局、一番よいのか? 大問4問の解答順序にセオリーはあるのか?」という、前回も触れた質問は例年、非常に多い。

 結論を先に言ってしまえば「自分にとって『これが勝利の方程式だ』という解答順序があれば、それを守ればよい。が、ただやみくもに順序通り解くと、罠にはまることがあるから注意」ということになる。

「罠」の最大のものは「古文が難しい年度」である。2009・2010年には、古文が非常に難しい年が2年続き、受験生は阿鼻叫喚の地獄を味わったようだ。それらの年度は、ほんの数年前と比べて古文の本文に格段のレベルの差があり、わたくしQ氏も泣いている受験生を見て、これはいじめ案件ではないかと疑ったほどであった。

 共通テストになってからは、難度も分量も異常といえるほどの出題はないようだが、こればかりは今後も何とも言えない。古文の難易度予測は地震予知に似ている。今後、古文が急に難しくなることが絶対にないとは、口が裂けても言えない。センター時代から、難しい年の古文は、旧帝大や難関私大の入試国語の出題文さえ遥かに上回る、全大学入試の古文問題でいちばん読みづらいのではないかと思えるような物語文を、よく出題してきた。

古文に比べれば、漢文は極端に難しくしようがない。返り点さえ忠実に追えれば、とりあえずはどんな漢文も読み下すことはできてしまうからである。漢文が難しいとは、漢詩やその押韻・表現技法が出題されたり、たとえ話が分かりにくくてテーマが追いづらかったりする場合に、ほぼ限られる。

Q氏の受験生時代、漢文は「無勉科目の代表」だったが、近年は日本語力の低下に伴ってか、漢字が読めない受験生が激増して「漢文が分からない」という訴えが増えてきた。しかし、どのみち最悪の古文より最悪の漢文の方が楽であり、問題としては取り組みやすい。

そして前回触れたように、共通テスト国語で最も得点しやすいのは評論と漢文だという事情は、今後もあまり変わらないだろうと予測できる。だから、評論と漢文はできれば取りたい。

そして、古文よりは、現代日本語で書いてある小説の方がまだ読みやすい。小説の問題点は「不正解とされる選択肢に書かれた登場人物の心情が、完全に間違いとは言えないような内容である」など、出題者側の解釈のゴリ押しによって悪問が生じやすいことだ。また、共通テストでは生徒による「ノート」の部分で聞かれる表現の特徴などが、限られた時間の中で本文に戻って確認するのが難しいために、解答中に時間切れになりやすい。

古文は、本文さえ読めれば問題は非常に簡単である年も多いので、最初から捨ててかかりたくはないのだが、異様に難しい泥沼の年に当たってしまった時に困る。

そこで、Q氏が多くの受験生に薦めるのは、

①大問4問を現代文(第1・2問)と古文漢文(第3・4問)の2セクションに分けて考える。

古文漢文セクションから先にやるのは推奨しない。古文が異様に難しかった場合、時間を食ってしまい、得点源である現代文の解答時間に影響が出るからである。ただし、古文漢文からやって時間内に終える訓練を十分に積み、もはやその順序でないと調子よく解けないという人は、古文漢文からやるのも可だろう。

③そこで、やはり最初は現代文、しかも評論→小説の順でやる。

④評論は要領さえつかめば高得点を上げられるから、とにかく最初に評論を速く読んで、手早く片付ける。

⑤評論の次に小説をやるが、小説は問題にクセが強いものが交じっていることがあるので、本文はなるべく速く読み、問題に時間をかける。

⑥現代文のあとに古文漢文セクションに入るが、まず古文と漢文の本文の字面をざっと眺め、簡単そうな方から着手する。古文が解答時間を左右しやすいことを考えると、「常に漢文から解く」もアリだろう。古文が簡単そうなら、別に古文からやってもよい。

⑦ ①~⑥を通して、解答順序を変えるときはマークミスに注意し、また、事前の練習段階から解答順序を変えてやる癖をつけておいた方がよい。本番で急に順序を変えても対応できるという自信があれば、本番で変えてもよいが、多くの受験生は、本番に「評論→小説→漢文→古文」という順序でやる気ならば、練習の時からその順序を守った方がいいだろう。

そして、目標得点は、

①評論と漢文で40点以上(1問間違い程度)

②小説と古文で30点台後半(2問間違い程度)

とするのが妥当だ。

そうすると、だいたい150点(75%)となる。このラインが、だいたい英語の160点(80%)に相当するから、あとはこのラインを1問でも2問でも上回るように、慎重にやるのみである。小説と古文でも1問間違いずつ程度に持っていけて、評論か漢文のどちらかで満点を取れれば、170点(85%)を超える。

…これを獲らぬタヌキの皮算用にしないために、何が必要か。多くの受験生においては「選択肢の絞り込み方」が得点に大きく影響するのではないかと思う。次回からは、選択肢の検討の仕方を話題にしよう。