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共通テストの国語(13) 裏ワザは効くのか①

2023年5月6日 勉強方法

共通テスト国語の模試でなかなか得点が伸びない受験生の悩みの内容に多いのは、「どうして得点が伸びないのか、そもそも原因がよく分からない」ということではないだろうか。

わたくしQ氏も今まで多くの受験生を相手に大学入試国語の授業を実施してきたが、センター試験時代から、

「授業で、特に現代文の本文の読み方を詳細に教わり、自分でもかなり読めるようになったと希望を持ったのに、いつまで経っても模試の得点が上がらない。むしろ大量失点が続く。本文を読めるようになったという実感は幻なのだろうか?」

という受験生の悩みに、かなり頻繁に出くわした。

現代文の場合、受験生本人の「読めた!」「意味が分かった❤」という実感は、錯覚ではないことが多い。特に難しい評論は、理解できたときに「あ、わかった!」と叫びたくなるような「目ウロコ感」が襲ってくるのが普通だ。評論が読めたかどうかは、自分で分かるものなのである。

だから現代文に関しては、「読めた!」という実感が得られるまで、難解な評論をじっくり1本、読み込む訓練をするのが一番よい方法だ。

数学が得意な医学部受験生諸君、数学の難問が解けた時には自分で「解けた!」と分かるものでしょう。解けたという実感がとうとう持てぬまま、いつの間にか問題が一方的に解けているということは考えにくい。同じように、評論の読解にも「あ、分かった!」という実感はちゃんと伴うものなのである。

だから、分かったという実感があるのに得点できないというのは、本来ならばおかしい。

そのような症状があり、しかも模試ではお話にならない大量失点が続く場合、原因はほぼ100%、「選択肢の絞り込み方を知らず、2択に絞った段階で、すべて間違った方の選択肢に誘導されている」ことだ。

国語の学習目標から言えば、ただ文章を読んで意味を理解できればよいはず。が、共通テストをはじめとする択一式の試験では、本文を理解した上で、さらにもう1つ、正しい選択肢を指摘できなければならないのである。この段階でつまずく人が非常に多い。

だからこそ、共通テスト国語の対策としては、特に現代文で「誤った選択肢に誘導されないための、択一式の解法」を、本文の読解とは別に身につけなければならないのである。

ああ面倒くさい。

でも安心しよう。選択肢の絞り込み方は、過去問をやる間に、早ければ1~2週間で分かってくるはずである。

選択肢の絞り込み方を検討する前に、センター試験時代に特に話題となった「裏ワザ」について取り上げてみたい。

センター試験時代、国語や英語の問題について「本文を読まずに、選択肢だけ見て正解を指摘できる」と称する「裏ワザ本」が出回り、一時はかなり売れた。公務員試験に関する著書なども多い、津田秀樹氏によるシリーズが有名である。

以前に触れた、出題された本文を読まない「ヨマヌ真理教」信者の受験生がこの本を持っていたから、津田氏の裏ワザ本に触発されて、ヨマヌ真理教は爆発的に信者を増やしていったのかもしれない。

「裏ワザ」「本文を読まずに、選択肢だけから分かる」などと言われると、言葉は悪いが、いかにもうさんくさい。Q氏も最初は、津田氏の方法論をかなり怪しいと見て、敬遠していた。が、実際に読んでみると、非常に面白い、ためになる本であった。

いまは本が手許にないため正確に引用できないが、津田氏が採用していた方法は「選択肢に表れた作問者の心理を徹底的に読む」というものである。津田氏の本に書いてあったかどうかは忘れたが、一般に考えつきやすいものとしては、

「1番の選択肢が正解だと、受験生がその先を読まなくなるから、1番を露骨な正解にはしにくい」

「解答欄に同じ数字が続くと、自信のない受験生は合っているかどうか不安になって答えを変えたりしやすいため、自信のある受験生だけがしっかり答えられるよう、正解に同じ番号をしばらく連続させることがある」

などがある。後者の「同じ番号の連続」は、もはや択一式試験の作問のスタンダードとなっている。どの番号が何回連続し、どこでその連続が途切れるかは予め読めないため、鉛筆を転がして一定確率で正答を出そうとする受験生を陥れるには、同じ番号を何度も続けるのが効果的なのである。

津田氏の「裏ワザ」は、その種の出題者心理を過去問分析から的確に抽出したもので、詳細は忘れてしまったが、例えば、

「選択肢①に『カラスが黒ければ、雨が降る』というような内容があり、選択肢③にその『裏』に当たる『カラスが黒くなければ、雨は降らない』という内容があったとすると、2つの選択肢は結局、同じことを言っているに等しいから、両方が同時に正解となることはあり得ず、①も③も不正解だと結論できる」

というのに近い指摘があったと思う。おっしゃる通りで、こういう「2つの選択肢が結局似たようなことを言っている」例は、実際の設問にはよくある。

詳細な内容を忘れてしまったので、本来は津田氏の著書を批評するわけにはいかないのだが、別に内容をdisっているわけではないのでお許し願うとして、ほかにQ氏が経験的に気づいた「法則」を挙げると、

「国語の択一問題では、受験生は知らない熟語を含んだ選択肢を本能的に避ける。だから、正解となる選択肢にはあえて本文に使われていない、難しい熟語が入っていることがある」

「英語の択一問題では、国語とは逆に、受験生は知らない単語を含んだ選択肢を正解と見なす傾向がある。だから、あえて難しい単語を含む誤った選択肢を配置すると、受験生はそこに誘導されてしまう」

などがある。

このように、選択肢だけを検討して正答を1つに絞れるかどうか…と聞かれたら、

「出題者心理のウラのウラまで読める鋭い受験生ならば、場合によっては可能かもしれない」

くらいのことは言える。が、そのあたりにとどめておいた方が、Q氏には無難だと思える。

つまり、選択肢だけを読む「裏ワザ」も、まったく無根拠ではないが、それだけに頼るのは危険かな…という位置づけである。

もう紙数が尽きたので、裏ワザについては次回、もう少し補足しよう。

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