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共通テストの国語(18) 選択肢の絞り方②──2択からの絞り方 (1)

2023年10月11日 勉強方法

さて、共通テスト国語、評論問題の選択肢の絞り方を、実際にやってみよう。

題材は2021年度(令和3年度)共通テスト第1日程・国語 第1問 香川雅信『江戸の妖怪革命』である。本文の必要箇所以外は引用しないから、本文は、何らかの形で各自入手してください。

さて、この「問4」を見てみよう。問題は、

「傍線部C「妖怪の『表象』化」とは、どういうことか。」

「表象」という用語の意味だけでなく、本文論旨の中心部分を問う設問である。中心部分の理解を試す問題だから、これはできないとまずい。配点は7点。赤本の教学社のレベル判定は「やや難」である。

まず、選択肢をざっと読んでみよう。ここではなるべく速読する。

「明らかにダメダメな選択肢」がいくつ見つかっただろうか。

まず、

「① 妖怪が、人工的に作り出されるようになり、神霊による警告を伝える役割を失って、人間が人間を戒めるための道具になったということ。」

はトップバッターとなる選択肢だが、いきなりダメダメでしょう。赤字部分がダメダメである。62字中38字がダメ。ダメ率61.3%である。

選択肢①に正解は持ってきにくい、という出題者心理を踏まえても踏まえなくても、これは明らかにダメですね。

確かに13, 14, 16段落に「人工的」「人工物」が計3回出てくるし、13段落には導入説明として「人間が約束事の中で作り出すことができるもの」という表現があるが、これは「妖怪」の説明ではなく「表象」の説明である。

「妖怪」は、「人間がある約束事のもとで作り出すことができる『記号』」=「表象」として扱われるようになるより前に、「神霊からの『言葉』を伝える」(11段落)「記号」として既に存在していたのだから、要するに、「同じ『記号』としてではあっても、人間が妖怪に対する扱い方を変えた」わけであって「妖怪を人工的に作り出すようになった」わけではない。

なにを寝ぼけたこと言ってんだ、顔洗ってこい!…というボケ選択肢だが、この「表象」あたりの話がこんがらがってしまっている受験生は、この選択肢の前半がおかしいことには気づかないかもしれない。それは、もうちょっと読解力を磨こうね、という判定だ。

が、大学入試センターは、終盤の「人間が人間を戒めるための道具」という「だめ押し」的なダメダメ部分をちゃんと設定してくれている。ここは本文にまったく書いていない。こんなの、ダメに決まってるでしょ、というカンジである。親切だなあ、大学入試センター。年末の寒風の中、ひとの親切は身にしみます。

①番を正解として選んだ諸君には、Q氏はかける言葉がない。エイメン。

次に分かりやすいのは2つあるが、まず④の選択肢を検討しよう。

「④ 妖怪が、人間の手で自由自在に作り出されるものになり、人間の力が世界のあらゆる局面や物に及ぶきっかけになったということ。」

これは赤字部分がダメダメ。ダメ率50.8%。

最初の「妖怪が、人間の手で自由自在に作り出されるものになり」は誤っていると判定できない受験生も多いかもしれない。が「自由自在に作り出される」のは「表象」であって、論理的には直接「妖怪」のことではない。妖怪は「人間の手で自由自在にコントロールされる」という記述は14段落にあるが、「作り出す」とは言ってない。「妖怪」そのものは古くから「ある」ものだとされていたわけであり、近世中期になってその性格が変わったのだから、「フィクション」として人の手で自由自在に作り出せるようになったものがあるとしたら、妖怪の存在そのものではなく、妖怪の「表象」としての性質、すなわち「ビジュアル」や「性格」「種類」などに過ぎないだろう。この部分、もし誤っていないとしても、説明不十分で、論理的にあいまいである。

この部分は、先ほどダメダメ判定した選択肢①の冒頭と同じである。このように「同じ表現を含んだ選択肢が2つあったら、両方不正解」という「裏ワザ」は本にあったが、確かにそれが当てはまっている例のように見える。

そして、冒頭部分で迷ったとしても、後半の「きっかけになった」が完全アウト。「人間の力が世界のあらゆる局面や物に及ぶ」と同意表現がある14段落をよく読むと「きっかけ」ではなく「帰結」だとある。人間の力があらゆる局面や物に及ぶと考えられるようになった結果として、妖怪の神秘性も薄れ「キャラクター化」した、というのが論旨なのだから、きっかけと帰結(結果、結論)では方向性が正反対である。

こんな風に、純粋に文字単位で「ダメダメ箇所」を探していくのである。ダメダメ箇所を選択肢の文の字数で割ることで、ダメ率を算出することができる。ダメ率を出してみると、共通テスト国語の選択肢がどういう風に作られているかが分かりやすくなるだろう。

さて、ひとつひとつの選択肢の解説が長くなるので、1問1回では済まない。

①と④のほかにもう1つ「ダメダメ」な選択肢をすぐに見つけられるだろうか。

割と簡単かもしれない。答えは「③」の選択肢である。

この③がなぜダメなのか、受験生諸君は考えておいてください。割に簡単である。

以上、①③④がダメダメだと分かったからには、2択で検討する必要があるのは②と⑤になる。

次回は③がダメな理由と、2択からの絞り込みの大詰めをやろう。