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共通テストの国語(17) 選択肢の絞り方①──文節単位で検討する

2023年10月10日 勉強方法

(2022/12/25執筆)医学部受験生諸君、クリスマスはいかがでしたか。

クリスマスも勉強? 当たり前だろって? …おつかれさまでした。「当たり前田のクラッカー」って知ってる?

※おもいっきり余談で恐縮だが、クリスマスソングには流行りすたりがある。昔は「サンタが街にやってくる」「ママがサンタにキッスした」や、ビング・クロスビー(知らないかな…)バージョンの「ホワイト・クリスマス」だったが、

今はワム!の「ラスト・クリスマス」(1984)、マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」(1994)、あるいはポール・マッカートニーの「ワンダフル・クリスマスタイム」(1974)、日本では山下達郎「クリスマス・イブ」(1983)あたりが定番と化した観がある。

 ※ジョン・レノンとプラスティック・オノ・バンド「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)(1971)」は、さいきん聴かない気がするが、どうか。ウクライナで戦争が終わってないからかな。

どれも、見事に30年近く、あるいは30年以上前の歌であることに注目したい。

日本の「失われた30年」と「新しいクリスマスソングの定番が出てこない」こととに関係があるのかどうかは知らないが、この30年は世界的に、IT領域の技術的進歩以外に「コンテンツの革新」というものがないような気は、確かにする。アニメなどでは進歩が起きているのかもしれないが、細密化が進んでいるだけのような印象である。わたくしQ氏にそう見えるだけか。

受験生の皆さんも、人口縮小期の日本に暮らす以上、これから色々なことを経験するだろうが、常に少しでも新しいものを作るような気概は持って、がんばってください。

さて、ようやく共通テスト国語の選択肢の検討のやり方である。

まず、漠然と選択肢を読んで、カンで〇×を決めているという受験生。医学部志望者にはいないような気もするが、いるかもしれないから申し上げておく。悪いことは言わないから、それだけはやめておいた方がいい。

本文が読めたという実感が少しでも持てたら、次は選択肢もひとつひとつ、注意して読む必要がある。その場合、

① 4~6択(大部分は5択)の選択肢のひとつひとつについて、必要に応じてザーッと本文を参照しながら、本文と内容が一致しているかどうか確かめていく。

この際、割にハッキリと「おかしい」と分かる選択肢が必ず1つ以上は交じっているから、そのように「明らかにスカ」な選択肢は、わざわざ本文を確かめず、記憶だけに頼って排除しても構わない。

本文を読みながら意味段落ごとに内容を記憶するように、以前の回でQ氏が皆さんにご忠告したのも、この「明らかなスカ」を、記憶だけですばやく切り捨てられるようにするためである。

②明らかな不正解の選択肢はだいたい3つあるのが普通で、それらを排除していくだけで、正解候補は「2択」に絞れることが多い。2択に絞れないうちは「本文が読めていない」と考えていいだろう。本文がぜんぜん読めない高校2年生などに問題を解いてもらうと、3択や4択になってしまうらしい。

選択肢式問題は「正解数+1」の紛らわしい選択肢を配置するのが「作法」のようだから、2択に絞れるか絞れないかが、基礎学力の指標と言えるかもしれない。

③ 2択に絞ったら、あとは慎重に1つずつ検討する。

まず、2択のうち不正解となる選択肢(以下「ダミー」と呼ぶ)は、選択肢の文中、ごくわずかな箇所だけが本文の趣旨と合致しないように書かれている。

文節単位で検討していくと、ひどい場合は1文節だけ本文の趣旨に合わない(「××的に」の「××」だけが違う等)などという例もある。

要するにダミーの選択肢は、

「選択肢の文が印刷された面積全体の中で、ごくわずかな部分だけが本文と一致せず、あとは正しい」

という形で作られている。

純粋に、視覚でとらえられる面積の問題である。慌てて読み飛ばす受験生は、2択で排除すべきダミーの選択肢の正しい部分にだけ着目し、本文に一致しないごくわずかな言葉を見逃すのである。

だから、2択に絞ってからは、2つの選択肢をひとつずつ慎重に、文節単位で本文と照合し、選択肢の部分ごとに横に〇や×を書き込んだりしながら、×のない方を正解として選ぶ習慣をつける。決して「何となく合ってそう」というカンに頼らないように。

④2択から正解を絞り込む場合、ある程度「裏ワザ」的発想は役に立つ。ダミーの選択肢はいかにも正解らしくカムフラージュするために、本文の言葉をもっともらしく使っている場合が確かに多い。

それに対して、本当の正解は、

(1) 本文の言葉を使っておらず、正誤が判断しにくい別の表現に言いかえてあるとか、

(2) 本文の各所に散りばめられた表現をひとつにつなげており、全体として本文の趣旨に合っているのかどうか判断しにくいとか、

何らかの加工がなされている場合が多いのは確かである。

だから、

(1)の場合は、本文の難しい表現をやさしく言いかえる「翻訳力」が必要になるし、

(2)の場合は、全体をサーチしながらすばやく文章の要旨をつかむ「まとめの力」が必要になる。

どちらも、国語の入試で試したい読解力の重要な要素だから、いくら「裏ワザ」的意味で手の内を読まれようとも、大学入試センターはこのパターンを何度でも踏襲してくる可能性が高い。

パターンとしては受験生に読まれてしまったとしても、問題文の中身でいくらでも勝負できるから、今後もこの「正解は内容を言い換え、不正解は文中の言葉を使う」は、割に見抜きやすい基本パターンとして多用されるだろう。

あまり奇をてらった「裏ワザ」的意味でなしに、参考にしてもらえれば幸いである。

さて、では具体的な問題をやってみよう。

2021年度(令和3年度)共通テスト第1日程・国語 第1問 香川雅信『江戸の妖怪革命』を取り上げたい。過去問としてあとにとっておきたい人以外は、本文を読んだうえで、ひととおり(第1問全体を)やってみてほしい。過去問が手許にない人も、大学入試センターのHPから入手できる。

共通テスト初の評論文だが、非常な良問である。本文の選択も申し分ない。大学入試センター熟練の作問が光る、というカンジです。「試験問題評論」というジャンルがあるならば、批評家Q氏は賛辞を進呈したい。

まあ、これなら択一式でも、Q氏の言うような弊害はない。よく作られています。

…というところで紙数が尽きてしまったため、以下次回。

最初に「問4」を検討しよう。これは共通テスト国語の問題に解答する際にモデルとなる「典型的なパターン」である。